D'URBAN QUALITY

「ダーバンのスーツは軽い」。

ダーバン製品をリピートしてくださる方も、現場の作り手たちも、声を揃えるようにこう言います。ですがスーツというのは、上下合わせて1kgほどが平均的。ダーバンには細番手の糸で作られたスーツが多いですが、それでも重量は大きく変わりません。にもかかわらず、軽く感じる。その理由はダーバンの伝統である、日本人の体型に合う"丸いスーツ"作りにあります。

丸いスーツとは、身体のどの部分にも片寄った無理をかけない、立体的なスーツのこと。スーツはもちろん、服というのは平面の生地からできています。平面の生地をただ縫い合わせただけでは、身体を包みこむような軽やかさは生まれません。人体工学に基づき、軽くやわらかで、それでいて着こんでも型くずれしない“"丸いスーツ"を作る、技術が必要です。

「いせこみ」「おいこみ」と呼ばれる縫製テクニックをはじめ、製作過程で何度も行うプレス（アイロン）ワーク、伸縮度が異なる生地の性質を正確に捉える経験値、さらには快適な着心地を演出する裏地の厳選や、スーツの骨格ともいえる芯地のセッティングなど。
その高度な技術の一つひとつが、羽織るように着られる"丸いスーツ"作りを支えています。

天然素材であるウール（羊毛）を原料にしているスーツ生地は、組織などの要因で、気温や湿度によって縦横に伸縮する性質を持っていることをご存じでしょうか。ダーバンは毎シーズン、60種類ほどのスーツ生地を扱っていますが、それらもまた季節や気候などによって生地の特性はさまざま。

そんな性質が異なる生地を、ひとつのパターン（型紙）で作るとどうなるか。当然、品質や着心地にブレが生じてしまい、満足のいく仕上がりに至りません。誰がいつ、どの生地を選んでも安心できる一着を完成させるために、ダーバンは素材の特性を熟知した上で、その素材に適したパターンを作成しています。

ちなみに、繊細な糸を使用しているがゆえにほつれが出やすいなど、特に扱いが難しい生地には「特殊」と呼んでいる工程を追加しています。現在、特殊の項目は350種以上。今後も新しい生地でスーツを作るたびに増え続けていきます。

一つひとつのこだわりが、ダーバンにとって当たり前のこと。なぜなら、そうして仕上げた一着こそが、ストレスのない日常を演出する"スタンダード"になるから。それがダーバンに根付くモノづくりの考えであり、誇りでもあります。

ダーバンのスーツはかれこれ半世紀以上、宮崎県日南市にある「宮崎ファクトリー」で裁断、縫製、仕上げの作業を一貫して行っています。また、スーツの原料となるウール生地の多くは、愛知県一宮市を中心とした「尾州（びしゅう）」にある服地メーカーに支えられています。

ダーバンが大切にするのは、すべての製品が日本人にふさわしく、エレガントであること。そのために、どれだけの手間がかかろうと、高い裁断・縫製技術や高品質な生地を扱える国内工場と手を取り合い、丁寧にものづくりをします。それが日本のビジネスパーソンからの信頼につながっていると信じているから。

スーツを身に着ける意味も、工場や産地を取り巻く環境も、あらゆる面が大きく変化した現代。けれども私たちは"共存していくパートナー"と共に、より良いスーツ作りへの意欲を決して失いません。