宮崎ファクトリーでは、ダーバンの既製品、パーソナルオーダー品を同時進行で製作しています。着数や納期が一律化された既製品と、仕様や納品時期にばらつきが生まれるオーダー品では、たとえ同じスーツといえど作業に差が生じます。そこで重要なのが「工数管理」。工数管理とは、ものを作る上での手間を数値化したもの。同ファクトリーで管理グループリーダーを務める清水さんは、いかに効率よく安定して生産できるか、工数管理に目を行き届かせます。

「仕掛在庫（製造途中の製品の在庫）や人員の配置などを工夫しながら、スピーディーかつ安定した生産を心がけています。安定した生産はお客様からの信頼につながり、また従業員の負担を軽減することにもつながっているからです」

宮崎ファクトリーは“丸いスーツ“作りのために、縫製・裁断・プレス・仕上げなど各生産工程において、平面的な布地を立体的に作り込むためのさまざまな技術を駆使しています。ですが、なかにはこんな苦労が。技術グループのリーダー、酒元さんは次のように話します。

「長年続けているからといって、理想とする“丸いスーツ“がすぐに具現化できるわけではないんです。新しいシーズンを迎えるごとに、何十種類とある生地をどうすれば形にできるのか、ダーバンの企画チームと工場側で話し合い、試作を重ねますが、それでも現場で起こる不具合はつきもの。その不具合は生地の特性によるものなのか、縫製段階で起きるのか。表地ではなく付属が原因だった場合など、多岐に渡ります。そういった問題の原因追求と対策を行い、各現場でさらに補正をかけた先にようやく"丸いスーツ"が完成します」

宮崎ファクトリーの特徴のひとつに、あらゆる生地を自動裁断機（CAM）で正確にカットできる点があります。実は、ここで使われている裁断機のほとんどはメーカーと独自に開発したもの。裁断について話してくれたのは、CAM開発にも携わっている生産グループのリーダー、蛯原さん。

「スーツの原料であるウールは季節や気候によって伸び縮みするので、裁断する際には生地のコンディションに合わせた細かな工夫が必要です。特に格子（チェック）など柄生地の場合、柄がほんの少しずれるだけで出来栄えが大きく変わってしまったり、気を配らなければならない点が多いため、いまだに人の手で裁断している工場も少なくないと聞きます。宮崎ファクトリーがどんな柄でも機械で裁断できているのは、これまで蓄積してきた生地の知識や、短期間でいかにロスなく高品質なスーツを生産できるか考え続けてきた結果だと思います」